※映画の内容を含みます(ネタバレになるかもしれません)
映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」
先日、小栗旬主演の「人間失格 太宰治と3人の女たち」という映画を見ました。太宰治の本を映画化したものです。
何年も前の作品ですが、他にも見たいものが多かったので、自分の中で最近やっと順番が回ってきたのです。
脇を固める女優さんは宮沢りえ、二階堂ふみ、沢尻エリカの綺麗どころ。
男女の縁、業の深さ。理屈では片づけられない、割り切れない、そんなどうしようもない人間の生々しい場面が続くのですが、見終わった後にはなぜか清々しい気持ちでした。
人間なんてそんなものでしょう…と。このある意味の安堵感は何なのでしょうね。
映画の中で、最後まで関わっていた女性と川に飛び込んで心中しようとしている太宰は、いよいよという瞬間に一瞬ためらいます。
セリフはこんな感じで、太宰が「頑張れば、もう一度二人で生きられるんじゃないか?」と女性に問います。
そこに答える彼女のセリフが何とも悲しかった。
「生きなくてもいいの、生きたらずっと一緒にいられなくなるから」と。
共に暮らしていても、そばにいても、自分以外の何かに心が移っていく太宰に苦しみ抜いた末の決意です。
つなぎ留めて自分だけのものにするためには一緒に心中するしかないのです。
それくらい惚れ込んでいるのです。川に落ちていく女性の顔はとても幸せそうでした。
太宰は「どうしてこんなことになったんだろう」と狐につままれたような顔つきで川に落ちていくのです。
女性たちはタイプも置かれている立場も違う、太宰にとってはまさしくそれぞれ全く別の女達です。
太宰は実はどの女性も必要で、みんなにそばにいてほしかった。
そんな甘えん坊で弱い男性だったのでしょう。
三人の女たちと太宰のシナストリーの推測
それぞれ三人の女性のネイタルと、太宰との間にどんなシナストリーがあるのか想像してみました。※あくまでも映画の中での人物像についてです。
●正妻(宮沢りえ)・・・・・良妻賢母、そして貞淑な妻。最後まで太宰を見捨てることなく耐え続ける。そして子供たちには泣き顔は決して見せない。強く辛抱強い女性です。
妻のネイタルチャート
きっと月に火星以遠の天体からのハードアスペクトはないでしょう。
そして金星に対して土星がソフトに絡んでいる女性だと思います。
ネイタルの太陽は女性にとって配偶者もあらわしますが、もしかすると太陽の様相にハードな象意があるかもしれませんね。
ネイタルの太陽にドラゴンテイルがコンジャンクションになっていたり、土星がハードに絡んでいたり。
そうなると、父親との縁が薄かったり、折り合いが悪ったり、経済的にも、あまりあてにならない父親像が浮かびます。そしてそんな父親に似た人と縁が出来やすい。
しかし太陽と土星のハードは経験を積んで成長していくうちに、本人を磨いていきます。
あそこまで、破天荒にやりたい放題の男性と縁があるものの、本人は粛々と家庭や子供たちを守り続ける。
きちんとした分別もあり、包むように子供たちを育んでいく姿勢は、まさに良妻賢母。
月はベネフィック天体と絡んでグランドトラインを形成していて、精神は良くも悪くも非常に安定している女性かもしれません。
だからこそ、このような状況から逃げずに留まってしまう。
しかし留まることは必ずしもいつも良いこととは限らないのです。
妻と太宰とのシナストリー
夫婦の定番の太陽と月の絡みもあるでしょうが、ノード軸との絡みがあり、かつその絡みはスクエアかもしれません。
ノード軸とライツ(太陽・月)がスクエアで絡むと、ライツ側はノード軸側の面倒をみないといけない、とか振り回されたりするのですが、縁を切ることができず腐れ縁的に関係が続いていくことが多いです。
そして、やはり太陽と土星の絡みもあるでしょう。
正妻の座につき、最後まで太宰の妻で居続けました。子供をもうけていますので、太宰の死後も縁は途切れずに何らかの形で続いていきます。
太宰の月にジュノーがコンジャンクションになっているかもしれません。
三人も子供をもうけていますので、夫婦の相性(精神面・身体面)の良さをあらわすアスペクトもきっとあるでしょう。
やはり、太宰との縁を完全に断つことができないだけのあたたかい感情をもち合わせるようなシナストリーが見受けられるはずです。
●愛人1(沢尻エリカ)・・・・・女性として太宰に寵愛され、子供にも恵まれます。自分に対しての愛情を巧みに利用して、自分の野心をかなえるべく社会進出に向けて着々と、そしてしたたかに太宰に関わり続けます。太宰に対しての愛情は一番薄かった女性なのではないでしょうか。太宰自身よりも、彼に付随するものに魅力を感じていた節があります。
そして三人の中では太宰から実質的な恩恵を一番受けた女性でしょう。
失った、苦しんだというより、結果的には、いろいろな意味で与えられた人です。
愛人1のネイタルチャート
野心をもち、あの時代に良妻賢母を目指すのではなく職業婦人としての成功を願った点で、太陽に天王星がアスペクトしている女性でしょう。
そして水星にアスペクトが多く頭のキレる人でしょう。
自分も本を書いていたのですから。水星には土星や木星のアスペクトがあるのではと思います。
愛人1と太宰とのシナストリー
きっと女性の金星には太宰の木星と天王星がアスペクトしているでしょう。
一目見た時から惹かれるものを感じ、何かと与えたのは太宰です。
子供も誕生したのですから、恋愛感情だけではなく、縁の深さをあらわすシナストリーもあるでしょう。
自分を社会に押しだしていくためのチャンスをくれたのは太宰との関りです。
女性のディセンダントに太宰のライツ(太陽と月)が乗っているかもしれません。
恋愛に絡んで、物質的恩恵を受けるのは金星と木星の絡みが筆頭です。
ハードであれば、木星は金星に注ぎっぱなし、与えっぱなしになります。
それが木星の望みだからです。
この女性は自立心が強く、自分のために何でも利用できる女性です。
さっぱりした男女関係を望み、自由と自立を望み、性別にこだわらない点で、月は水瓶座であるかもしれません。
●愛人2(二階堂ふみ)・・・・・ある意味で太宰に一番執着した女性でしょう。しかし自分自身に対する自信のなさから男性にしがみつくように愛しただけかもしれません。やはりその愛はホントの愛ではないのかもしれない。執着心から結びついている男女は世の中に多いでしょう。どうして一緒にいるのかはわからない、でも離れられない。腐れ縁的な関係です。そこに幸せは見つかりにくいのかもしれません。
太宰に対してすがるように愛情を求める。それは愛人1とは正反対の女性です。
太宰に惹かれていく自分を申し訳なく思い、戦死した配偶者に対して謝罪します。
そんな純粋でしとやかな心をもちつつ、どんどん太宰にはまり込み、いつも太宰から愛されることだけを望んでいる女性です。
しかしその様子は決して幸せそうには見えません。
出会った相手が悪かったのでしょうか。配偶者が戦死さえしなければ、幸せな家庭の主婦でいられたのでしょうか。
愛人2のネイタルチャート
金星に土星がハードに絡むと、自分の女性としての魅力に自信がなかったり、女性としての自分を大切にできない傾向が強くなりやすいです。
わざわざ幸せにはなれないだろう男性にどんどん引き込まれていくこともあります。
また月が傷ついていても同じような傾向が出やすくなります。
月と土星のハードは、意識して気をつけないと疑い深くなったり愛想に欠けます。
その結果女性として苦労しやすくなります。
相手に対しての疑心暗鬼が伝わり、二人の関係に水を差していたのかもしれません。
常に一緒にいる男性の影響でそのような傾向も緩和されて、女性としての幸せを得やすくなることもありますが、太宰との出会いはそのような出会いではなかったようです。
上記のようなネイタルでなくても、結婚生活が浅いうちに配偶者を失うということは大変なショックでしょうし、ぽっかり空いた心に太宰が入ってきたのでしょう。
これは因縁事のように思います。
愛人2と太宰とのシナストリー
一緒に心中するのですから、非常に因縁めいた泥沼のような縁。
このようになることを避けるのが難しいような強い縁があったのかもしれません。
月とリリスのコンジャンクション(オーブはタイトにとります)は、引き合いが非常に強く一度関係が出来ると離れるのはなかなか難しくなるといわれています。
はじめは天体側が惹かれ、そのうち天体はリリスに翻弄されるようになります。
そしてリリスも決して月を離したくありません。
リリスの縁は悪縁といわれますが、いろいろなご夫婦のシナストリーでも見かけますし、それはうまくいっているご夫婦でも同じです。
まだまだ検証が必要ですが、悪いだけの縁ではないとは言えると思います。
引き合う吸引力が非常に強いので、立場的に一緒になるのが難しい関係の場合は、不倫のようにマズいことになるということでしょう。
状況が許す場合であっても、その後の関係が発展的な関係にならないかもしれません。
リリスは深淵で解釈の難しい小惑星です。
はまり込んだら抜けられない、そんなイメージです。
この女性の月は太宰のリリスに捕まったのかもしれません。
またリリスとノード軸の絡み(特にテイル)ではリリス側が強烈に飲み込まれる関係といわれています。
しかしこのように悪縁といわれる繋がりであったとしても、太宰に執着し、なんとしても独り占めしたかったこの女性にとっては、リリスと月のような因縁めいた強いつながりが二人の間にあるということだけで、とてもうれしい喜ばしいことだったではないでしょうか。
どちらにせよ、そのシナストリーが一つあるだけでこの映画のような関係に落ちることはありません。
やはりシナストリーは総合的に判断することが大切ですが、もしこの二人のように結果的に最悪の結末を招いてしまった場合には、このようなシナストリーが見受けられることがあるかもしれません。
終わりに
今回は作中の登場人物のネイタルチャート、シナストリーチャートを推測してみました。
いつの時代も男女の問題はたくさんの物語を紡いできました
。衝撃的な作品もたくさんあります。
この「人間失格」は時代背景が違っているこの令和の時代においても、新鮮なインパクトを与える問題作の一つである、そう思います。